402号室の鏡像

あるいはその裏側

『言の葉の庭』を観てきたよ

 新海誠作品は非モテ男子には精神的なブラクラである。

 とか言っておきながら僕は新海誠作品が大好きです。『秒速5センチメートル』から今作に至るまでほとんど追わせていただいているので今回の『言の葉の庭』は予告から本当に楽しみだった。もう喜び勇んで劇場に足を運びました。
 んで感想。新海誠は本当に新宿駅が好きなんだなとまず最初に思った。あらゆる人間が社会生活を営む為に各所から集い、仕事に出かけていくある種の交流地点であり、鬱憤や疲労の溜まり場、社会の喧騒の集合体として『秒速5センチメートル』や今作でも描かれているように思えた。行き詰った人間がそれでも生きていかなければいけない町、それが新宿で、そして今作で意識的に描かれている「雨」により、新宿御苑という楽園が浮かび上がってくる。
 晴れの日に新宿御苑に行けば、多分そこには散歩するカップルや営業途中の足を休めるサラリーマンが見られるのだと思う。しかし雨が降れば、誰もいないはずの世界に「彼女」が現れる。名前も知らない女性は高校生の主人公にとって未知の存在であり、同時に心惹かれ憧れる追存在へと変わっていく。この物語において雨は逢瀬の「スイッチ」として描かれ、二人を巡り合わせる役目として成り立っていた。多分そこは御苑であって、御苑じゃない。どこか別の世界なんだ。
 いろんな人に見て頂きたいので一応ネタバレ込みの感想はよして置きますが、この作品はどうしようもないくらいの名作で、自分自身が物書きを志しているだけあって、どうしても追い付けない、自分には描写出来ない「セカイ」がそこにあることを示していられるようで、観ていて色々な意味で辛くて、映画館の暗闇の中で拳を握った。頭の中で自分の中で弾けるインスピレーションを抑えることが出来ずにメモを持ってこなかったことを後悔したりとか、その癖、目はスクリーンから剥がすことが出来ないもどかしさに煩悶したりだとか。なんだ、アニメとしてある種の完成系がこの作品にあるような気がした。だってアニメじゃないと、東京をあんな異世界として描写出来ないもの。

 あと、凄く女性の足がフェティッシュな描かれ方をしていて、彼女を演ずる花澤香奈の声がとてもエロイので是非劇場の音響設備での鑑賞をお勧めします。それに耳の横に落ちるような雨の音も堪能できる。

 EDに流れる『Rain』も凄く名曲。

多分近いうちにもう一回観に行く。ブルーレイも買う。