『仮面ライダー鎧武』が最終回を迎えました。
仮面ライダー鎧武 (ガイム) 変身ベルト DX戦極ドライバー 仮面ライダー鎧武&バロンセット 【日本おもちゃ大賞2014 2013年度ヒット・セールス賞】
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「虚淵玄」の脚本
仮面ライダー鎧武の脚本を虚淵玄が手がけると言った時僕は正直驚きを隠しきれなかった。昔から彼の作品は大好きで、
ファントム ~ PHANTOM OF INFERNO ~ (通常版)
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「フルーツ」×「ダンス」×「戦国」という要素
実際問題このぶっちゃけあたまおかしい三要素をどうまとめ上げるのだろうかと思っていた。まずは最初、ビートライダーズというチンピラっぽいダンス集団の陣取り合戦、その抗争に「ロックシード」と呼ばれる不思議アイテムが利用されるという時点で一応はクリアしている。本作における仮面ライダーは、このロックシードを専用アイテムである「戦極ドライバー」に嵌めこむことで変身する「アーマードライダー」と呼称される。主人公である葛葉紘汰はこのダンス集団のなかのチーム「鎧武」の元リーダーで、現在は自分の進路を見つめなおす為にダンスから離れているが、陣取り合戦の際には時折助っ人として呼ばれることになる。そこで様々なロックシード絡みの事件に巻き込まれていくうちに、次第に彼の運命を揺るがす濁流に巻き込まれていくことになるのだが――。
「インベス」から「ユグドラシル」そして「オーバーロード」へ
『仮面ライダー鎧武』において主な敵役となる怪人は「インベス」と呼ばれる生命体だ。なぜかロックシードから召喚でき、ポケモンのように使役できるが、時折脱走して市民を襲ったりだとか、なぜか町に発生する「クラック」と呼ばれる裂け目から出てきたりする。実際そのクラックの先にあるのが「ヘルヘイム」と名付けられる森であり、インベスは異世界に住む怪物なのだ。
事実、このインベスと言う怪物が物語において非常に重要かつ残酷なファクターと化してくる。なにせ、物語が序盤から中盤に差し掛かるにつれて、インベスの正体が実は人間であるという事が判明してしまうからだ。ヘルヘイムの森になる果実を口にすると、突如人体に異変が生じ、最後には怪物と化してしまう恐ろしい設定が明かされていくに連れて、物語には虚淵流の暗雲が立ち込めてくる。ダンスで陣取りしたり、ポケモンバトルしたりする余裕なんて無くなってくるのだ。
はじめはこのインベスとの戦いがメインとなっているのだが、物語が進むにつれて、主人公達が住む町「沢芽市」を支配する企業「ユグドラシルコーポレーション」が、インベスの存在やヘルヘイムの森、クラックの存在などを隠蔽し、実験利用しようとしていることが示唆されている。ビートライダーズの抗争も実はユグドラシルの実験の一環で、主人公たちが仮面ライダーに変身する為に使うベルトやロックシードもユグドラシルが実験の為にばらまいたもので、黒幕の存在が明らかになるうちに、紘汰たちの怒りの矛先はユグドラシルに向かっていく。
実際、ユグドラシルの行っていることは人類救済に他ならない。ヘルヘイムの森を研究し、その存在が世界に害する可能性を予見した上でドライバーを製作し、もし沢芽市が危険ならば町ごと消滅させるまでの力を持っている。そんなことを市民に隠し、危険な人体実験まがいのことをしているとなれば、紘汰やビートライダーズたちの怒りが増すのも当然だろう。インベスとの戦いは、ユグドラシルコーポレーションへシフトしていき、呉島貴虎やシド、湊陽子や戦極凌馬など、野望を持つユグドラシル社員たちが彼らに敵対する。
しかし、人間同士で争っている状態は束の間、今度はあらゆる世界を侵食する脅威の植物ヘルヘイムに順応し、更なる段階へ進化したインベスより上位の存在「オーバーロード」と言う知性体とコンタクトする。はじめは紘汰たちは、彼らならヘルヘイムに対してなにか対策を知っているかもしれないと希望を抱いていたが、向こうが好戦的であると知るや否や、オーバーロードとの全面戦争に突入していく。
『幼年期の終わり』「子供である難しさ、そして大人に成ると言う意味」
「オーバーロード」という名前の由来はおそらくこの小説に登場する上位知性体である異星人から由来しているのだと思う。それはさておき。
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更に彼のライバル的ポジションとして存在するのが駆紋戒斗。彼は鎧武と対立するダンスチーム「バロン」のリーダーで好戦的な性格をしているが、彼も過去に、ユグドラシルの横暴な政策によって自らの暮らしを失っている。
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そして、ユグドラシルの重役である呉島貴虎の弟である、呉島光実。英才教育を受け非常に優秀であり未来に期待されているが、その実はチーム鎧武でダンスを楽しんでいるという矛盾に苛まれている。
そういった彼らがダンスチームとして抗争を繰り広げていくが、ヘルヘイムの森の侵略やユグドラシルたちの暗躍に連れて、もはや子供と言う身分に甘んじては居られない状況になっていくのがこの作品の肝であると思う。
世界を守ると言う題目を掲げるユグドラシルコーポレーションの社員は勿論全員大人であり、彼らは「大人」と言う立場で紘汰たちに物事を語ることが多々あった。全世界の危機をその肩に背負う呉島貴虎は、弟である光実に対し「ノブレス・オブリージュ」と言う言葉の通り、高貴なるものとして振る舞うべきと価値観を押し付けることが多々あった。勿論それは世界平和の為に自らを殺した結果であるが、光実にうまく伝わっていたとは言い難い。
中盤における大人の象徴として顕著なのがシドだ。彼は錠前ディーラーとしてロックシードをダンサーたちに売りさばいていたまさに黒幕張本人であるが、ユグドラシルの手先として正体がバレると、自らの欲望を剥き出しにし、大人の権力や威光を振りかざす尊大な物言いが非常に目立つようになる。理不尽極まりない主張に紘汰たちは彼を通して、ユグドラシルの横暴に怒りを燃やしていくことになる。
シドはたびたび「大人」という立場を利用して紘汰たちを踏みつけるが、勿論これに説得力が欠けているのは紘汰たちにも視聴者にもバレバレである。なにせ自らの欲望の為にユグドラシルの手先として動いているが、すぐに裏切ったり予想外な動き方をして、つまるところ自分の欲望の為だけに動いている。ユグドラシル組のほとんどがぶっちゃけ言うとそんな感じなのだが、他の誰も信用せず個人の利権だけを奪い合う大人たちの存在に世界平和を期待するなど、紘汰たちにとってはかなり無理がある話だったのだとか思う。結果的にヘルヘイムの侵食を止めたかったのは貴虎だけだったのは明らかで、他の誰もが平和なんて望んじゃいなかった。そういった悪役的存在を通して、大人と子供の対比を印象づけていたのも鎧武を構成する要素の一つだったと思う。曖昧で漂っていた時間は、他人や外側からの容赦ない悪意に踏みつけられ、幼年期の終わりを宣告される。大人にならなければ割り切れない。大人であらねば戦えない。子供の純粋さでは立ち向かえない悪意に直面したからこそ、もしかしたらユグドラシルの社員たちも大人として自らの選択を歪めていったのではないかとも考えられる。
「大人と子供」という対比は、例えば『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジを取り巻く環境や、虚淵玄本人が手がけた『魔法少女まどか☆マギカ』で既に行われている。例えば子供が世界の危機に直面してしまった場合、子供は子供で居られなくなる。世界の危機に対し大人が無力ならば、子供が世界の責任を背負わなければならない。悲しきかな、碇シンジも鹿目まどかも、大人たちが出来なかった救済をその小さな体ひとつで背負わされてしまった。
「考えても分からなかった答えが 誰かに傷つけられて見えたりして」
『時の華』――仮面ライダーGIRLS
ジンバーレモン変身時に流れる挿入歌にも印象的な歌詞が描かれている。
ユグドラシルコーポレーションがしようとしていたのは、確かに最初の目的は世界平和だったのかもしれない。誰が掲げたのかは知らないが、少なくとも呉島貴虎がそれを目指していたのは事実だ。だけど戦極凌馬やシドなんかはそんなの知ったこっちゃないという位に自身の目的に突っ走っているし、そんな人間たちが信用できないとなれば、紘汰たちが運命の重荷を背負わされるのは道理だ。純粋に誰かの為に戦うと言う意思を最初から掲げていたのは、他でもない紘汰だったから。
楽しくダンスをしていた紘汰と光実も、物語が佳境に入っていくうちにその袂を分かつことになっていく。先輩と後輩で仲良くしていたのにも関わらず、世界を襲う脅威へ対抗する際の考え方の違いひとつで、ついにはお互いに殺し合うまでの関係になっていまう。普段の日常を守りたかっただけのはずなのに、変わらない日常を守りたいだけだったはずなのに、変わることを強制された挙句、ついには後戻りできなくなってしまったのは、誰のせいでもない。「理由のない悪意」のせいだ。状況に適応するためには変わっていくしか方法はない。環境に淘汰されないために生命が進化と言う選択肢を取ったように、人間も変わらなければ生きていけない。それは幼年期の終わりであり、大人としての責任を自覚するという事だ。
駆紋戒斗の抱えた「強者という矛盾」
この点について一番最初から気が付いていたのはおそらく戒斗だろう。弱肉強食の理、強者が弱者を踏み躙る世界において「力」の責任を理解していた彼は、ダンスの陣取り合戦においても牙を剥いていた。あの頃の状況を考えれば馬鹿のように見えるだろうが、実際問題黙示録的状況になってしまえば、彼の考えが正しかったことが分かってくる。力が無ければ生き残れず、ただ理由なき悪意に潰されていく。そんな世界を生き抜く為には甘い戯言ではなく確かな力が必要だということを、戒斗は初めから理解していた。しかし問題は、彼自身に力がないことだった。そこが駆紋戒斗という男の自己矛盾であり、おそらく最後まで抱え続けた自己嫌悪感覚だったのだろうと思う。
例えば物語の序盤から戒斗は紘汰やユグドラシルの人間、そしてオーバーロード達に盾つき続けた。しかし彼の戦いの中で決定的な勝利を得ることは少なく、ようやく得た勝利も、ゲネシスドライバーという新たな力や、最終話近くになって自らの生命を対価にしたオーバーロード化などと言う多大な対価を払って得たものだ。幼少期から強者に踏み躙られてきた経験があったからこそ理解していた強者と弱者の絶対的な関係の中で、最終的に彼が辿り着いた結果は「強者による絶対統治」だった。
強者が自らの力を自覚し、弱者が永遠に踏み躙られない世界――それは確かに、ある種の世界体制としては正しいのかもしれない。絶対強者の君主制ならば、当主として相応しい。湊耀子もそれを理解していたがゆえに、彼の覇道を見続けようとしたのではないかと個人的には思う。ただ、彼がただの暴君ではなく純粋なる「強者」となろうとしたのは、彼自身が「弱者」であることをきっと誰より痛感していたからだ。例え頂点に立ったとしても、彼は永遠に自らを強者と呼ぶことは無いんじゃないかとも思う。
ただ、弱者であることを理解しているがゆえに、虐げられることが尚更許せないのだろう。そういった反骨心や不屈の下剋上精神はまさに戦国時代の武将のようで、農民から成りあがった豊臣秀吉のようなハングリー精神は、まさに『鎧武』と言う物語に相応しい存在だったのかもしれない。では、何故彼は黄金の果実――万能の願望器を手にするに相応しくなかったのだろうか?
黄金の果実に相応しい存在とは
最終的に、ヘルヘイムの森に対抗するのに必要な願望器として「黄金の果実」という存在を巡る戦いになっていった。時間も空間も超越した万能の理さえあれば、神にも匹敵する力を手に入れることが出来る。それを巡る戦いの末、最後に対峙したのはやはり、葛葉紘汰と駆紋戒斗という二人だった。初めは反目していたものの、ユグドラシルやオーバーロードという共通敵には共に手を取り合い、諍いを起こしながらもお互いの力を認め合うまでの関係になっていたはずだった。それにも関わらず、最終的に二人が戦う結果に至ってしまったのは、やはり根底に抱える信念の決定的な違いが相容れなかったからだろう。
「お前を倒して証明してみせる。ただの力だけじゃない本当の強さを!」
「それでいい。貴様こそ俺の運命を決めるに相応しい」
――葛葉紘汰、駆紋戒斗
ただの力だけではなく、優しさも世界には必要だと言うことを、紘汰は自らの生き方と戦いで証明してきた。誰しもに「甘い」「考えなし」だと罵倒され続けながらも、紘汰はいつも自分以外の誰かの為に戦ってきた。戦極ドライバーを手に入れてから、カチドキアームズを手に入れてから、そして極アームズを手に入れてから、自らが人間の体からかけ離れつつある恐ろしさに耐えながらも、紘汰は最後まで人間が持つ優しさを信じて戦ってきた。だけれど、紘汰は多分分かっていたのだ。戒斗の考え方も決して間違ってはいないと。だから自らの主張を通す為に二人は戦うしかなかった。正しいもの同士がぶつかった時、そしてお互いに譲れない主張があるという「正義」と「正義」のぶつかり合いだ。戒斗が決して間違っていたわけではなく、紘汰が全て正しいわけでもない。ただ黄金の果実という絶対的な王座がひとつしか無かったから奪い合うという結果になってしまったのだろう。最終的に黄金の果実に選ばれた存在が戒斗だったとしても、訪れた世界の果てには、戒斗なりの正義を理想とした世界の結果が待っていて、その世界もまたある種の幸福があったのではないかと思う。紘汰の正しさを認めた上だからこそ「それでいい」と前置き、「貴様こそ俺の運命に決めるに相応しい」と言う言葉が戒斗から出てくる。紘汰に負けること、イコールそれが戒斗自身の正義の終焉と悟っているから。
サガラは何故紘汰にだけ「力」を与えたのか
紘汰と戒斗の決定的な違いとして、与えられた力により成りあがったものなのか、自らで勝ち取った力により成り上がったものなのかと言う点がある。例えば紘汰はジンバーレモンやカチドキアームズ、そして極アームズなど、物語の節目節目でサガラから強化アイテムを渡されており、立ちはだかる敵に対抗する手段を得てきた。しかし戒斗は、はじめの戦極ドライバーやゲネシスドライバーの他には決定的な力を与えられたことはない。ゲネシスドライバーを渡されるまではユグドラシルやオーバーロードたちへの戦いにスペックの違いから苦戦を強いられ、戒斗はなんども敗北の痛みを噛み締めてきた。その差異は一体どこにあったのか。元よりなぜサガラは紘汰に目を付けていたのだろうか。
あくまで個人的な考えだが、これはおそらく、力を求める際の考え方の違いだと思う。戒斗の場合は、自らが成りあがり強者となる為に、力を求めていた。結果的に「弱者が踏み躙られない世界を作るため」と言ってはいるが、元々それは利己的な考えから発露したものだろう。大して紘汰は、自分のことを度外視して、他者の幸福を何より最大限に求めて戦いをしていた。それはつまり個人が犠牲になり多数の最大幸福を促す、生命体として都合のよい存在に見えないだろうか?
サガラという存在は曖昧だが、最終話手前にてヘルヘイムの果実による生命体の進化や適応を促す存在、つまり森自体の集合的無意識の具現体――「ヘルヘイム」そのものだと判明した。ヘルヘイムの森に侵食された地球人類が、オーバーロードのように進化適応するには一体何が必要だったのか?それはまさしく「抵抗できる誰かの存在」だと思う。当然侵略に対し人類は抵抗するだろうが、強大な力に滅ぼされてしまってはヘルヘイム自体の思惑ではない。ヘルヘイム自体の目的はつまり「進化による淘汰」「破滅と再生」に尽きる。
例えるなら恐竜の絶滅、哺乳類の繁栄だ。三畳紀から白亜紀にかけて生命体の覇者として進化繁栄してきた恐竜は、何か決定的な外因により絶滅の一途を辿った。地球全体が塵に覆われ、暗黒に閉ざされた世界のなかで光明を見出したのは、今まで恐竜による捕食対象でしかなかった哺乳類だった。哺乳類は人類に進化到達すると、瞬くまで地球上を支配した。まさにそれは、生命進化における最大級の下刻上と言っていいだろう。
だから、ヘルヘイムにとって紘汰は都合のよい存在だった。侵略者に滅ぼされるだけでなく、その混乱の中においての同士討ちで滅びてしまう可能性があった人類達の内乱を調和する存在、そしてオーバーロードと言う存在と渡り合い、人類の先を見つける存在として一番最適だったのが紘汰だったのだろう。……もっともサガラ本人からしてみれば、それすらもただの「エンターテイメント」だったのだろうが。
呉島光実は何故英雄になれなかったのか
紘汰が自分を度外視した他者を気遣う考え方で、戒斗が利己的に強者を目指し、最後には二人の戦いになった。しかし何故、途中まで強者として君臨していた光実が最後には崩れ落ちてしまったのだろうか。
それは端的にいえば「自己の欲望」が希薄だったからだ。
例えば初めから、光実は自らの立場を偽って普段から生活していた。兄には勤勉な学生を装いながら、チーム鎧武ではユグドラシルの兄が居ることを隠していた。その両面性は、ヘルヘイムの侵略が続いてから顕著に成っていき、ユグドラシルのスパイとしてアーマードライダー達の動向を監視するようになっていく。初めの彼の戦いに赴く理由は「自分たちの幸福だった場所を守りたい」「紘汰や舞たちと一緒にいたい」というのが始まりだった。つまりこの点では紘汰と似ており、自分を度外視した願望を抱いているのが分かるが、実際の所それは「自分が嘘を吐いていても都合のいい場所」を求めていただけなのかもしれない。呉島家のホープとして期待されている自分、チーム鎧武として踊る自分。そのどちらが本物なのか理解できずにどっちつかずな自分で居たからこそ、他者からの悪意が介入した際に、そのバランスが崩れてしまったのだろう。憧れであった紘汰に対し理不尽な怒りを抱くようになってしまったのも似たような理由だ。結局は光実の中で「呉島家」であり将来を期待されていると言う面で知性に自信を持っているのは作中の言動や行動で分かるが、だからこそ、内心尊敬の裏側で、ダンサーの彼らを見下している面が隠れていたのだろう。後半ダンサーであるペコに対して「黙れクズ」と言ったのも、本心から見下しての言葉だった。紘汰のことは確かに「チーム鎧武」と言う面では先輩として尊敬していたのだろうが、実際の危機に直面して出た紘汰自身の無責任さや、根拠のない楽観さは、知性的な光実からしてみれば信頼を失う原因になってしまったのもうなづける話だ。ダンサーとしての自分、呉島家の自分。光実の二面性は、最後まで彼に取り憑いて離れなかった。だからこそ光と闇の狭間で崩れてしまい、最後には守りたかった高司舞さえも守れずに、辿り着きたかった未来さえ見失って、崩れてしまった。明確な目的意識を持って戦っていた紘汰や戒斗と違う決定的な部分がこれだ。
光実の選択が全て間違っていた訳じゃない。リアリストであることも必要だろうし、夢想家じゃ守れないものがあるのだって確かだった。ただ、他の誰しもが自らの居場所や信念を持っていたのに対し、決定的な信念を歪めてしまい、その指針が曖昧になってしまったからこそ、光実は現実に負けてしまった。
しかし紘汰だけは光実を見捨てなかった。自分を憎み殺そうとした光実に対して、最後まで戦う意思どころか憎しみすら抱かなかった紘汰は、最後の最後まで彼を救おうとしていた。最終話において、自分の居場所を全て無くして放浪していた光実が、結果的にもう一度「誰かのために」戦うことでアーマードライダー龍玄にもう一度変身出来たということは、つまり、今まで成れなかったヒーローにこの瞬間に成り、かつて紘汰が守った世界を再び自分たちが守っていこうという決意の表れだった。
魅力的な設定、キャラクター、役者たち
まだまだ書きたい事は沢山あるのだけれど、凄く長くなってしまいそうなのでこの辺で結論にしよう。
平成ライダー二期はWから始まって、オーズ、フォーゼ、ウィザードと名作揃いなのだけれど、特に好きなWやオーズに匹敵、いや個人的に鎧武はそれ以上に好きなライダーになった。個人的に、平成ライダー二期特有の「二話完結」があまり好きではなかったので(かと言って嫌いではない)次から次へと新しい展開が舞い込んできて「早く次がみたい」と思わせる連続形式が平成一期を彷彿とさせる感じで毎週楽しみに見れた。元々虚淵さんが平成一期テイストへの回帰やオマージュを意識しているのもあったのだろうけど、そういった面で、新しい風を吹き込もうとする斬新さもまたこの作品の魅力だった。仮面ライダーのシナリオって、途中は凄く面白くて盛り上がるんだけど途中でグダグダしてしまったりとかオチが微妙だったりで平均的に楽しめた作品って実は結構少ないんだけど(最終回付近の盛り上がりで麻痺している節がある)、鎧武に関しては、ダンスバトルが終わった辺りから最終回近くまで毎週毎週面白かった記憶がすんごいある。よく面白くないとネットで言われているダンスバトルの部分だって、後の黙示録的展開を考えると必要な平和的描写だったということがわかるし、そういう意味で言うと、子供向け特撮番組にしてはかなり作り込まれた意欲作だったのではないかと思う。
更には役者の演技もひとしおで、どのキャラクターにおいても凄い演技力を発揮していて、キャラクターだけでなく役者としても好きになれた。例えばミッチ役の高杉真宙なんかは演技力で言ったらトップレベルだったと思う。純朴な青年から狡猾な裏切り者まで一瞬で演じ分けられる役者なんてそうそう居ない。最近では深町秋夫『果てしなき渇き』の実写化にも出ていたようでそのクズ演技っぷり(褒め言葉)をこっちでも発揮しているらしい。まだ観てないんだけど原作は読んでいて、この作品に出ているトップクラスのガチクズ不良をミッチがやるって聞いた時はびっくりしたわ……鎧武のせいなのか……?
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んまぁ、本人の身体能力が凄くて、本編じゃスタント要らずの動きで変身前にしてクルックル回ったりバック転披露したりして
と、まぁ。他にもかなり記憶に残る役者さんとかが沢山出ていて、こないだなんかクイズ番組で呉島兄弟が出てたりしてつい普段見ないテレビを付けてしまったりだとかしてしまったので、そういった面でも鎧武が終わった後の彼らの行く末を一視聴者として見守っていきたいなと思う。どうやら佐野岳は今度ぬーべーの実写版に出るようなので、こっちもチェックしないと
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一から十まで僕好み過ぎた『仮面ライダー鎧武』、僕の中で凄く記憶に残る作品だったし、脚本から監督、役者さんなど関わったスタッフ全てに万感の思いを込めて拍手を送りたいと思います。一年間本当にありがとうございました!
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