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402号室の鏡像

あるいはその裏側

『CABIN』観たよ

キャビン スペシャル・プライス [Blu-ray]

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夏休みに山奥へとバカンスへ出かけた大学生5人。古ぼけた山小屋の地下で見つけた謎の日記を読んだ時、
何者かが目覚め、一人、また一人と殺されていく。しかし、その裏に若者たちが「定番のシナリオ通り」死んでいくよう、
すべてをコントロールしている謎の組織があった。その組織の目的は? 若者たちの運命は―? その先には、
世界を揺るがす秘密が隠されていた…。

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 ツイッターやらブログやらでちらほらと「SCPみたい」「特殊部隊全滅モノ」とか話題に出てて、僕の好きなもの詰まってそうな内容なのでいざ思い立ってレンタル屋から借りてきた。内容としては、あらすじにあるように、ホラー映画にありがちな、山荘に遊びに来た若者がゾンビに襲われる話。だけどこの映画は冒頭から、その若者たちが何か特殊な機関に監視されて、陰謀に巻き込まれていそうな様子が描写される。なんでも機関の陰謀により山荘に導かれて、何らかの儀式の生贄にされるためにモンスターをけしかけられ殺されそうになる上に、機関の職員たちの賭けごとの対象になっていると言う散々っぷり。

 そう、どっかで観たような山荘に、いかにもなビッチと脳筋とガリ勉と処女とオタクが泊まり、どっかで観たようなモンスターに襲われ、どっかで観たような組織に監視されてるという「どっかで見た」で構成されてるのがこの映画である。もはやテンプレートと化してしまったホラー映画の「お約束」を逆手に取り、そう言ったお約束はこういう機関が起こしてるんだよ!という皮肉な理由付けをしているのがこの映画である。例えばホラー映画でセックスし始める男女、大体こういう奴は最初に死ぬのだが、実は機関がフェロモンを空気中に流し込んで淫乱にしているという理由があったのだ。他にも、団結して脅威に立ち向かえばいいのに個別に行動したがる登場人物も、薬品によって判断能力を鈍らされていたり、ホラー映画にありがちな事は全てその機関が糸を引いていたのだ……という設定になっている。この山荘以外にも、日本やロシア、イギリスでも同時刻に機関による儀式が行われており、日本では小学生に貞子的幽霊がけしかけられている……という始末。ここまでは序盤であり『CUBE』『SAW』みたいなソリッド・シチュエーションホラーを模倣したものである。

 メタフィクション的構成が非常に見事で、つまる所、機関の職員=ホラー映画のお約束を楽しむ僕ら視聴者という構成になっている。ありがちな行動に期待し、ありがちな結果に満足する。あらゆるホラー映画により積み重ねられた伝統といっても良い展開の繰り返しを楽しんでいる視聴者ではあるが、ちょっと待ってほしい。でもやっぱり新しい展開、意外性を心の何処かで求めてはいないか……?




 ここからネタバレ。





 機関が生贄を支えていたのは「旧支配者」という存在。定期的に、五人の生贄を儀式形式で捧げなければ世界は滅亡すると言うお話。まぁぶっちゃけクトゥルフな怪物を封印する為に、機関が設立され、そのためにゾンビから狼男、殺人鬼や機械生命体などの怪異が収容されていたと言うお話である。最終的に山荘から逃げのびた男女達は機関に侵入し、怪物たちを解き放って大カタストロフを展開した挙句、生き残って儀式は失敗、旧支配者が蘇り、世界を滅亡させるというオチ。

 結局、メタ的な構造が絡みに絡んだ本当に良く出来た映画で、最後に巨人の手が世界を終わらせるというのも「普遍的な内容ばっかじゃ視聴者は満足しないんだぜ!」という映画ファンたちの声無き声の現れだったのかという事を、製作者達が示している気しかしない。だって考えてみると、世界でいくつも行われていたはずの儀式が、全て同じタイミングで失敗すると言う事など有り得るだろうか?儀式の成功率が高かった日本でさえも、貞子的な幽霊は封印されてしまったじゃないか。つまるところ、僕らはお約束なホラー映画に飽き飽きしていて、そんなものしか作れない製作陣は映画業界ごとブッ壊れちまえよ!という声があの旧支配者だったんだと。
 
 メタ的な視点を抜きで考えると、個人的に気になったのはやっぱり特殊部隊全滅シーン。収容されていた怪物怪異たちが一斉に解き放たれ、鎮圧に向かった特殊部隊は無残に引き裂かれ血みどろの地獄絵図と化す。でも、個人的には流石に化け物相手に軽装備過ぎないかと言う疑問が残っていた。アサルトライフル程度の武装じゃあれほどの数の怪物相手に勝てるワケも無いし、そもそもボタン一発で怪物が全員解放されるという警備体制もガバガバ過ぎる。職員たちも混乱にまったく対処出来ずに惨殺されてたし、対処用のガス発生装置も速効電気系統やられて死んでたし。

 つまり、個人的な解釈としては初めはSCP財団のように崇高な理念を以って設立された機関で、大幅な予算と優秀な人材を以って世界中の怪異を収容し、そして旧支配者封印の為の施設を建造したのではないかと考える。しかし、年月が経つに連れ官僚的な組織の仕事がどんどんルーチン化し、何も危険が起こらない故に緊急対処の為の予算は削減、武装は軽度なものしか装備されなくなり、職員の危険意識も薄れていった。賭けごとをしていたのも楽観的な視点が定着してしまったことによるだろう。そんなことが全世界の組織で起こり、積み重なっていき、最終的な大カタストロフに繋がったのではないかと考えられる。

 そういう表向きのストーリーラインでも凄く面白い映画だし、勿論本来の楽しみ方のメタ的な視点でも楽しめる意欲作だと思った。脚本がジョス・ウィードンという後に『アベンジャーズ』を監督する人なのだけど、出てくる怪物も、まさにホラー版アベンジャーズといった所であらゆるホラー作品に出てきた怪物を意識している豪華っぷり。機関の所長がシガニー・ウィーバーってのも超おもしろいので、全てのホラー映画を愛する人に見て欲しい作品だと思う。

 この予告だけは許さん。貼っといてなんだけどネタバレ満載なので、未見の人は絶対観るなよ!というかDVDパッケも割とネタバレなんだよな……