402号室の鏡像

あるいはその裏側

「生きるってのは、他の誰かの命を喰らうってことだ」『仮面ライダーアマゾンズ』四話まで感想

ある街に人知れずアマゾンと呼称され、人を喰らう異形の存在が解き放たれた。その数、実に4000体。この元凶を生み出した野座間製薬は、系列企業・ノザマペストンサービスの駆除班に「アマゾン」を秘密裏に処理するように命じた。
これは、そういう状況を背景とし、ある清潔な家屋から一歩も外へ出ず穏やかに暮らす青年・水澤 悠と野生のカンと戦闘力だけを頼りとし、獣のように生きている男・鷹山 仁が出会ったことをきっかけに、徐々に明らかになっていく「アマゾンズ」の苛烈な生存闘争を綴った物語である。

仮面ライダーアマゾンズ - Wikipedia

平成一期を彷彿とさせる作風

 『仮面ライダーアマゾンズ』を四話まで観た。あの有名な通販サイトAmazonが配信サービスで仮面ライダーを、それもアマゾンのリメイクをやると知った時はどんな洒落だよ*1と思ったのだけれど、いざ公開された時の予告を見た時の気合の入り具合に驚かされてしまった。平成一期、特にクウガやアギトなどのダークな世界観を彷彿とさせる、怪人が現代社会に紛れ込み、人々を襲い、食らう恐怖。それに対峙する特殊部隊の面々など、見るからにシリアスな大人向けの作風をひしひしと感じて「何かが違う」と予告編をひと目見ただけで分かる作りこみが感じられたので、今に至るまでずっと観たいと思っていた。その期待は大当たりで、いざ一話を観てみると、何の変哲のない民家に突入する正体不明の特殊部隊が静寂の中民家の階段を上っていくと、薄暗い家屋の中に潜む蜘蛛型の異形――アマゾン体との接触というように、冒頭からハードで凍てついた空気の世界観が感じさせる作りになっていて、なんというか、自分の中のボンクラ脳が喜び過ぎて無意識に口角が上がっていた。アマゾンアルファやオメガの戦闘スタイルも、敵の四肢をもいだり上半身と下半身を真っ二つにしたりと、出血や四肢切断描写などグロテスクな点にも妥協しない、Amazonプライムの配信サービスであることを利用したクオリティの高さも感じられる作りに加えて、海外ドラマを意識したカットの切り方や、物凄く続きが観たくなる引き、つまりクリフハンガー方式で物語が次回に続いていく締め方など、国内外の様々な要素を詰め込んだ、エポックメイキング的なものを目指した挑戦的な作品なのだなということが観ていて感じられる。

自分の中の仮面ライダー像って

 本郷猛、つまり初代仮面ライダーがそうであったように、例えばキカイダーとかサイボーグ009など石ノ森章太郎作品に共通している概念において「例え人間で無くなっても、自身の正義を信じて人類の為に戦い続ける戦士」というのがあると思っていて、それが僕の中の仮面ライダー像なのだけど、正直平成二期の仮面ライダーはその要素を忘れて、単なる特撮ヒーローのアイコンとして使われている気がしていた。 *2勿論それを除いても面白い作品ばかりなのは承知していたが、やはり「改造人間」ないし「敵と同じ存在」でありながら「敵と同じ力」を行使して戦うっていうのが仮面ライダーの面白さなのではと僕は常々思っていた。その点、アマゾンズははじめから、仮面ライダーに変身する二人は敵と同じくアマゾン体であることが示唆されている。なんらかの陰謀で、知らずうちに自分の体がアマゾン体に変えられてしまっていた気弱な青年、水澤悠。対照的に好戦的でワイルドな性格でありながら、過去にアマゾン体の実験にかかわっていたことが判明する壮年の男性、鷹山仁。この二人が変身する仮面ライダーが、どう自らの内側に潜む獣を飼い慣らし、いかにして人間のため、あるいは自身が求める願いのために「仮面ライダー」として成り立っていくのかが、今から凄く楽しみ。特に悠の場合、今は状況に流されて戦っているに過ぎない状況なので、これから自分が一体何を求め、あるいは何を守る為に戦いに赴くのかが一番期待の要素かもしれない。

濃厚な描写の中に見え隠れするポンコツ要素

 前述したようにクオリティの高さは文句のつけようも無いのだけど、ただシリアスなだけではなく結構コミカルな要素もあったりする。街に放たれた怪人、アマゾン体を狩るために組織された「駆除班」のメンバーは軍隊のようにお堅い感じではなく、傭兵崩れのような破天荒な感じで誰も彼もが癖のあるキャラクターで、戦い方も統率されてない感じがまた荒っぽくて観ていて飽きない。演出に関しても、時々銃撃のマズルフラッシュの特殊効果付け忘れてる部分が結構目立っていたりとか、若干変なところで「ん?」と思わせるようなところがあって*3、異常にクオリティが高いところと安っぽいところがなぜかいい感じの塩梅になっていて、よくよく考えるといつも見ているニチアサの仮面ライダーって大体こんな感じだよなという安心感もある。脚本を手がけている小林靖子作品は、例えば龍騎やオーズに関しても、最初は若干ギャグ多めで、キャラクターの個性もつかみきれないけど、最後にはきっちり物語の主軸に登場人物の個性が沿ってくれているので、若干の粗に関しても不安要素はゼロ。ただシリアスなだけでなく、シリアスな世界観の中に突如挿入されるギャグっぽさがまたアマゾンズの魅力でもある。

ここからどう物語が転んでいくのか

 四話終了の時点で、悠は戦う理由もわからないまま、ただ状況に流されるままにアマゾン体駆除を続けるためにオメガに変身するわけだけど、それが彼の中に潜むアマゾンとどう折り合いをつけ、本当の戦う理由へとシフトしていく流れが気になる。そもそもアマゾン細胞とは何なのか、野座間製薬の本当の陰謀とは、そしてなぜ仁は野座間製薬から脱走して、アマゾン体を狩る為にアルファに変身して戦うようになったのとか、あらゆる登場人物のバッグボーンが明かされていくことにこれから期待している。グロテスクな要素や陰謀論的な大人向けのドラマなど、日曜朝では出来ないことにこだわって、新しい仮面ライダーの流れにアマゾンズが変わっていくことを個人的には期待してる。

Armour Zone(tv-size)

Armour Zone(tv-size)

 海外ドラマのようにOPが無いスタイルで、EDに主題歌が流れるのだけど、これが死ぬほどカッコよい。さらにEDの途中で次回予告が流れる作りなので、それもまた盛り上がりを加速させてくれるのだけど、やっぱカッコイイのでOP映像が観てみたい!と思ってしまう。ソフト化の際にはぜひ。

*1:実際、白倉Pの話ではそういう冗談からアマゾンズの企画が始まったというのであながち馬鹿には出来ない

*2:その点、オーズや鎧武は主人公が人間からかけ離れた存在に変わってしまう事についての葛藤が良く出ていたと思う

*3:ハンバーガーとゆでたまごがパワーアップアイテムのところは爆笑せずにはいられない