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402号室の鏡像

あるいはその裏側

映画の余韻がより一層深まる 小説版『君の名は。』『君の名は。 Another Side:Earthbound』感想。

映画を楽しめた人には両方おすすめ

君の名は。』『君の名は。 Another Side:Earthbound』を読みました。両方とも良かったんですけど、特に『Another Side:Earthbound』の方は映画であまり説明されていなかったことが事細かに補完されていて、自分が映画に対して抱いていた不満が大部分解消されたので、映画にもやもやを抱えている人は是非読んでみてほしいです。ネタバレはしないので興味を持った方は是非に。

忠実なノベライズながら、色々気づけた部分もある。

 前者は新海誠自身が映画に忠実にノベライズをしたと言う印象で、特に映画と違った様子や描写は無かったのだけれど、映画では分かりづらかった入れ替わりの時系列がすごく分かり易くなっているし、地の文にある心理描写が入れ替わり自体のおかしさや、思春期らしい恥ずかしさと好奇心が混ざり合うような感情がよくわかるので映画にハマった人なら復習の意味を込めて、是非読んでみると良いと思う。僕個人としては映画で何の気にも止めていなかった冒頭のシーンにあんな深い意味があるのか!と気付いてからは、最初からページをめくる手が止まらなかった。これを読んだ上でもう一度見に行くとかなり楽しめるんじゃないかなと思う。

原作を補完するサイドストーリー

 『Another Side:Earthbound』のほうは、原作では描かれなかった物語が四つの短編から構成されていて、ひとつが「三葉の体の中に入った瀧の視点」で、二つ目が「テッシーこと勅使河原の視点」、三つ目が「三葉の妹である四葉の視点」で、最後が「宮水としきこと、三葉の父親の視点から描かれていた。そのどれもが原作では分からなかった、別視点での描写などが書いてあって面白かった。例えば、女子の体の中に入る羽目になってしまった瀧がやたら冷静に三葉の体や女子的な部分を観察していたりだとか、ブラジャーに関して細かく考察を重ねていたりだとか端から見れば笑える感じの物語があったと思えば、建築業を営む実家に嫌気が刺していながらも、決して後ろ向きにはならないテッシーの考えなどが書いてあったり、他にも、急におかしくなってしまった姉に対し困惑しながらも、自分にも怪奇現象が降りかかった三葉の話など、読めば読むほど『君の名は。』が綿密な世界観とキャラクター描写で出来ていることが分かってきて、より一層キャラに愛着が持ててくる。

原作で描かれなかった、宮水の家の真相

 映画では三葉とその父である俊樹がどうして不仲なのかはあまり説明されず、三葉の母である二葉との死別が原因だろうということしか推察は出来なかった。だからこそ、どうして三葉が最後の最後にお父さんを説得して動かせたのか分からなかったのだけど、その辺りが丸っと補完されていて驚いた。元々、宮水の家になぜ、俊樹が婿入りしてきたのだとか、どうして宮水の家と俊樹が疎遠になってしまったのかとか、そもそも宮水の巫女とは一体なんなのか?と言う所が全然分からなかったのだけど、それら全ては宮水の血筋に原因があって、そもそも彼の妻であり、三葉や四葉の母である、二葉の存在自体に、全て集約されていた。そこに気付いた時には、二葉とお父さんが対面した時のとらえ方が全然違うことが分かって、多分もう一度本編を見返した時には全く違う受け取り方をするだろうなという感動があった。二葉の死をきっかけに、元々民俗学者だった俊樹が政治を志すようになり、市長として町の改革に携わろうとしている理由までしっくりきて、ただの頑固ものじゃない、ひとりの男性だということに気付いて、彼もまた大きな流れに翻弄された一人なのだという、淡い悲しさがあった。

とにかくAnother Sideは必読

 ノベライズの方は、まぁ後でも良いとしてもAnother Sideのほうはもはやこれ含めて本編だと思うくらいに良いので是非読んでみて欲しい。これを読むと読まないとじゃ前にも言ったように不明点やもやもやが解消されているし、何というかこれ含めて本編の伏線回収という感じなので、劇場で映画を観た後は是非、手に取ってみて欲しい。

Another sideを執筆した加納新太さんは『秒速5センチメートル』のサイドストーリーで、明里視点など違った切り口の作品を執筆しているので、これも凄くお勧めです。これもまた、読んだ上で本編を鑑賞すると違った解釈を得られて楽しい。