402号室の鏡像

あるいはその裏側

近況、最近面白かった作品とか、色々。

 ふと、取り留めのない文章を書きたくてここに戻ってきた。
 以前から時間が結構経過して、社会生活を始めたり、一年半くらいで挫けて転職したり、その過程で同人活動を始めたり、かといって転職先でも早速辞めたくなるという社会不適合者っぷりを炸裂させているあたり僕は結局、腐っても僕に過ぎないんだなということを実感する。それでも、映画を見たり小説を読んだりアニメを見たりと、趣味自体は変わらず続けていられる所を見ると、まだ僕という人間は生きていられるというのを少しだけ、実感したりする。社会生活の摩擦の中で自分自身のアイデンティティが擦り切れてしまいそうになる中で、面白い、楽しいと思える何かに出会えた時、僕は僕自身の断片を取り戻せたような、まだ生きて居られているという感じの、よく分からない安心感を覚える。

 そんなわけで、だらだらと、書いていきたい。

DEVILMAN crybaby

DEVILMAN crybaby Original Soundtrack

DEVILMAN crybaby Original Soundtrack

 ここ最近で一番インパクトの強かったアニメと言えばこれだなぁ、と思う。デビルマンと言えば例のOPとかクソ映画で有名かもしれないけれど、それ以前に永井豪のあの漫画の衝撃的な展開が一番有名だと思う。悪魔の力を持ちながら、人間の為に戦うデビルマンの業を背負った戦いは、今現在もいろんな形でサブカルチャーに対して大きな影響を及ぼしている。そんなデビルマンが『四畳半神話大系』などで有名な湯浅政明監督により現代風にリメイクされた作品が『DEVILMAN crybaby』。
 Netflix限定配信という限られた土壌だからか、僕の周りではあまり話題になっていないけれど、正直度肝を抜かれるくらい僕の中に刺さる作品だった。現代に即した内容ながらも漫画版に非常に忠実なアニメ化で、だからこそストーリー自体はオチまで分かり切っている。それでも頭をぶん殴られたくらいに衝撃を受けた。主人公不動明と、その幼馴染の飛鳥了。そしてガールフレンドの牧村美樹。crybaby=泣き虫というタイトルが示すように、元々弱虫な明がデビルマンになることにより、戦う強さを獲得するという側面の裏側で「誰かのため=ヒトのために泣くことが出来る」不動明自身の本当の強さ、涙を流す悪魔という、絶望の中でもヒトを信じることを忘れない純粋な感情というものがすごく端的に表現されていたような気がする。悪魔になった明を信じ、疑心暗鬼の世の中で人の善性を信じ、そして暴徒と化した人間に殺される牧村美樹。人間の善性を尊びながらも、暴力が全てを根こそぎ呑み込んでいき、その破滅でさえも最後には大きなうねりに呑み込まれてしまう。本来グロテスクな表現が多い原作なれど、湯浅監督のコミカルな絵柄で希釈されていて大分見易くなっている。直接的なグロテスクは減ったけれども「えげつない」と思わせる表現と展開の連続で、精神的な恐怖とか、ビジュアルだけの作品じゃないところがCrybabyの凄いところだと思う。Netflixはオリジナル海外ドラマとか、日本のアニメとか、国内外でとにかくすごいことをやっていて、国内利権に縛られたテレビ局とかアニメ業界の悪癖とかに負けない、一つのムーブメントになってほしいと思う。

A.I.C.O. Incarnation』

君は今…人間じゃない――。
人工生体の研究中に起きた大事故“バースト”によって、人工生命体が暴走した近未来の日本。“バースト”で家族を失った15歳の少女・橘アイコの身体に隠された<秘密>とは…?アニメーションスタジオ・ボンズと、『翠星のガルガンティア』などの村田和也監督がタッグを組んで贈るオリジナルバイオSFアクション。

君は今、人間じゃない―『A.I.C.O. Incarnation』15秒予告編 - YouTube

 Netflixオリジナル作品繋がりで。人間の脳でさえも簡単に移植でき、義体技術が発達したおかげで人間の体自体にも本質的な意味はなくなった高度な医療科学世界にて「本物の自分であること」を突き詰めた作品であると思う。橘アイコが両親を助ける為に「バースト」の発生源であるプライマリー・ポイントを目指す過程で自らの秘密に気付いてしまい、中学生の幼き身で世界さえも左右する決断を迫られるっていうのと、実質的主人公的立ち位置の神崎雄哉のアイコに対する一見疑問にも思える振る舞いがとても面白い。あと、人工生体に汚染された場所ではグロ肉が生命全てを容赦なく襲うブロブ的環境になっているのだけど、そこに潜入して貴重なデータなどを回収する「ダイバー」の存在が面白くて、常に攻撃に対して免疫を獲得する人工生体に対し、ダイバーが逐一薬品の組成とかを組み替えて弾丸を生成する戦闘のバリエーションが考えられていて面白いなと思った。アイコと神崎、彼らを護衛するダイバーとの関係性の変化も面白い作品なので、お勧め。

『アンナチュラル』

アンナチュラル Blu-ray BOX

アンナチュラル Blu-ray BOX

本作は、設立して2年弱の不自然死究明研究所(英:Unnatural Death Investigation Laboratory)= 通称UDIラボという架空の研究機関(公益財団法人)を舞台に展開する[2]。UDIラボとは、日本における不自然死(アンナチュラル・デス)の8割以上が解剖されないままという先進国の中で最低の水準という解剖率の状態を改善するために設立され、国の認可を受け全国初の死因究明に特化した調査を行い、警察や自治体から依頼された年間約400体の遺体を解剖調査しているという設定である。ここに勤める法医解剖医の三澄ミコトを中心に、ベテラン法医解剖医の中堂系、三澄班臨床検査技師の東海林夕子、三澄班記録員の久部六郎、所長の神倉保夫らが協力し合いつつ、毎回さまざまな「死」を扱いながら、その裏側にある謎や事件を解明していく

アンナチュラル - Wikipedia

 邦ドラマを見たのは本当に久しぶりだった。色んな人がお勧めしていたし、海外ドラマで司法解剖モノとかは結構好きな題材だったので、日本で司法解剖を扱う作品が出てくるっていうのが目新しくて、丁度テレビで最終回が放映された後のタイミングで見てみたのだけど、正直一話から度肝を抜かれた。石原さとみ市川実日子などのベテランキャストら演ずる、主人公のミコトを始めとした、UDIラボの濃いメンツと邦ドラマらしいおちゃらけた雰囲気の中にある、キャラクターひとりひとりの薄暗い過去。「不自然死=Unnatural death」を扱う中で、例えばインターネット社会やブラック企業など社会問題に対する問題提起などをうまくシナリオに挿入している辺りも、一話完結の中ですごく完成度が高い作品だと思う。基本的には一話で話が纏まるが、全体を通して、中堂系というベテランながら一見偏屈な解剖医の過去に殺された恋人に関する事件が背景として、終盤のシナリオに収束していく。
 最終話へのオチの付け方が本当にうまくて、一話から最後までどれも見逃せないくらいに伏線の配置やキャラクターの構成がよく出来ていて、見ていて無駄な部分やマンネリを感じることがほとんど無かった。僕が特に好みなのが、いじめを扱った七話で、インターネット社会における劇場型犯罪と現代のいじめ事情を両方扱って、そして「自殺」に関する個々人の考え方が強烈に出ていた。いじめに遭った二人の男子が選んだ選択と、残された少年が抱いたサバイバーズ・ギルト。劇場型犯罪として全国ネットへの配信を行った少年が、ミコトに対して突きつけた挑戦を通し、少年の抱えた思いが痛いまでに伝わってくる。
 『アンナチュラル』の主題は「死者は何も言わない。しかし遺体はモノを語る」というものだと個人的には思っていて、死体を解剖して隠された真実を突き止めるのがUDIラボの使命なのだけど、けれど遺体に残るのはあくまで証拠。死者がどういう思いを抱えているか、今、仮に死後の世界で何を思っているかは誰にも分からない。最後の最後、自死を選ぼうとした少年に対して告げたミコトの言葉「あなたの人生は、あなたのものだよ」そして中堂の「死んだ奴は答えてくれない。この先も、許されるように、生きろ」というのが、この作品全体の答えであり、そしてほのかに漂う「やさしさ」なのだと僕は思った。
 あと主題歌の『Lemon』がとてもいい場面で挿入歌として流れてくるのがずるい。最近流行ってる米津玄師、気に食わねえ……と逆張りしてたけど手のひらを返した。すまん米津玄師。LOSERとかピースサインも正直好きだ。

いぬやしき

「もしある日突然、強大な力を手に入れたら――?」世界を震撼させたSFアクション「GANTZ」を描いた奥浩哉の最新作が満を持して遂にアニメ化!

トップページ | TVアニメ「いぬやしき」 公式サイト

 前々からちょいちょい集めていたけど最近実写化されると聞いたので、完結を機に一気読み。最初は犬屋敷VS獅子神の展開になると思っていたけれど、まさか最後にあんな展開にもっていくとは思わなかった。多少強引な纏め方はGANTZに通ずるものがあるけれど、GANTZみたいに長々と引き延ばしたわけではなく、全十巻ですっきりと終わらせると思えば、あのラストもすごくきれいなオチの付け方ということで納得が出来る。さえない中年男性が、何も出来ずに告げられた余命三か月。しかし自分の体がサイボーグと化してしまって得た力にて一体何をするのか。反面、同じ境遇ながらも全く違う選択肢を選んでしまった少年獅子神に対して、どういう向き合い方を取るのか。ふつうは少年がヒーローでオジさんがヴィランというのがアメコミ的展開でありがちかと思うのだけど、アメコミ的ハリウッド展開を日本という舞台で堂々と展開し、そして中年のさえないおじさんがヒーローという超斬新のアプローチをして成立してるこの作品はほんとに凄い。色々なSF漫画があるけれど、こういう、日本を舞台にしたスケールの大きなアクション作品を漫画でやれるのは、日本では奥浩哉だけだと思う。GANTZも凄い作品だったけど、いぬやしきも最高だった。実写化も巧く行きそうだし、奥浩哉の次回作を本当に楽しみにしている。

なるたる

小学6年生の玉依シイナは小学校最後の夏休みに祖父母の住む島に行き、海で溺れかけたところを星の形をした変わった生き物『ホシ丸』に助けられる。ホシ丸は少年少女の意識とリンクし、変幻自在の能力を発揮する「竜の子」の一体であった。他の「竜の子」の持ち主(リンク者)との出会いのエピソードを挟みながら、シイナは「竜の子」を用いて世界をリセットしようとするリンク者たちの戦いに巻き込まれていく。

なるたる - Wikipedia

 ミミズジュースで有名な作品。『ぼくらの』の作者で鬱っ気が強いのは確かだけれど、直接的なグロテスクではなく、精神的にキリキリと締め上げてくるような不快感や痛みを伴う表現が、一種の魅力である作品だと思う。主人公のシイナを取り囲む複雑な家庭環境、人間関係だけでなく、自衛隊在日米軍などを取り囲んだ「竜の子」に関する国家ぐるみの陰謀、そして竜の子の持ち主であるリンク者たちの出会いが、ひいては人類という種、そして地球という惑星自体を包括するスケールの大きい物語に収束してくる。よく「セカイ系」とは言うけれど、僕はやっぱり、例えば人間関係とかヒト個人個人のミクロなやり取りが、世界全体を巻き込むマクロな事件に発展する物語が凄く好きなんですけど、この辺前述したデビルマンとか、エヴァとか、そういう作品群に似たものを感じる。物語全体に存在する大きな「うねり」のようなものに小学生のシイナが巻き込まれていって、彼女が少女から『女性』に変わる過程で様々なものを見、体験して、そして選んだ答えが最終巻なのだと思うと、それはどこか物悲しくも、微笑ましくもある不思議な作品だと思う。新装版が最近出て、それを電子版で読んだので、おすすめです。

とりあえずブワーっと書いてみた。

 このあたりでおしまい。結構時間はかかったけれど久しぶりにこういう物語の感想とか、以前に見たものを思い出してまとめる作業というのはすごく楽しくて、結構達成感がある。やっぱり、僕は作家を目指している身なのでマンガにしろアニメにしろ何にしろ、ただ漠然と享受しているだけではただ流れてしまうので「何が」「どこが」「どう」面白かったのか自分の中で反芻して、アウトプットすることで得られるものは気付けるものはやっぱりあるのだと思う。
 出来るだけ、精神が安定している時はアウトプットしたいとは思っているので、お付き合いいただければ幸いです。

最後に宣伝

 同人誌を友人の西織さんたちと書き始めました。FateとかGrandOrderなどTYPE MOONに関する小説同人誌です。K-BOOKS様で委託通販させて頂いておりますので、よかったら覗いていってください。
https://www.c-queen.net/k/+/circle/27659

以下、サンプルです。

www.pixiv.net
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